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目薬

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ここ、気が遠くなるほどの長期間、私は病臥に伏している親族のもとに通っている。

通っていても、私が例え側にいたとしても当人は意識不明のまま、チューブだらけで、すやすや気持ち良さそうに寝ているだけである。

長期になると、さすがに病人は体重も減少し、もう既に半分近くになってしまい、元気な時の顔の様相とは悲しいかな一変してしまう。

面会謝絶の集中治療室へは私しか入室は許可されず、例えマスクをしていても咳を一つしようものなら、IC専門看護師から注意されそうな緊迫した部屋。

脳幹のダメージが広範囲で、情動反応はまず無い。

痛みを感じず、意識も無く、昏睡をただ維持している生命装置とモニターだけがせわしなく動いている。

ある日、当人の左目にめやにがいっぱい固まっているのを発見した。

目の縁をそっとめくってみると、結構多く詰まっている感じがする。

やっと人間らしい生体反応を見る心地がして、妙に嬉しくなり、早速、涙目専用の目薬をゆっくりとさすことを試みる。

薬局をやっているので、目薬はいっぱいある。

何度か目薬をさし、かさぶた状の目やにがふやけるのを待つことにした。

次に柔らかいガーゼでそっと拭ってみると大きな塊がぽろっととれた。

もちろん看護師や医療スタッフの看ていない時にこっそりやってみた事であるが、こんな無能な私にも少しはお手伝いができたのかと思うと、気分がいつもになく良かった。

私と当人との無言の対話は現在もなお、続いている。

空白の時間を埋めることはできぬが、今の私は精神的な苦痛は感じない。
人間の存在するという意義がいかに重い事であるか、つくづく感じる秋の夜長である。