記事一覧

パーキンソンのご質問について

アイコン

先日、四国にお住まいの薬学生さん、Sくんからとても感動的なメールを
頂きました。
おっしゃる通り6年間は長いかも知れないが、考えようによっては短い期間です。しっかりと勉強されてください。
明日の薬業界の担い手となるわけですから、鉄は熱いうちに、何とかですよね。
それで、ご質問の現在の臨床で行われているパーキンソン病の薬物療法の件、ご興味あるとの由、承りました。

こんな浅学の小生ですが、病院時代を思い起こしながら、さらに現在薬局を運営しながら考えたことなど、書き連ねてみました。
あまりご参考にならないと思いますが、ご返信とさせて頂きます。

メカニズムの話しから入ります。
ほとんどお勉強されていると思いますが、再確認の意味でお読みくださいまし。

そもそも、パーキンソン病の基本的な病態は、ドパミン作動ニューロンである黒質線条体系の機能低下ですね。
ドパミンは血液脳関門を通過しないので、その前駆物質であるレボドパを投与して脳内のドパミン濃度を上げる一種の補充療法であるわけです。薬理の授業で習いましたね。

そこで、配合剤は単剤に比較して、

?レボドパ量の節減(単剤の1/4~1/5量で同等の効果) 
?消化器系の副作用が少なく、有効量まで増量しやすい 
?効果発現が速く,安定性が高い 

などの利点があるため、通常は配合剤が使用されます。
但し、ジスキネジアは単剤より出やすいし、
カルビドパとベンセラジドでは、効果に本質的な差はないと言われております。

単剤の方が使いやすいのは、次に小生が述べますup and downなどの効果不安定現象の出現時に、レボドパの少量頻回投与を行う場合です。

レボドパ(単剤,配合剤とも)は、長期投与で効果が不安定となり、up and down、wearing off、on offなどの現象が出現してきます。
投与間隔や1回投与量の調整、単剤の頻回投与、他剤(特にブロモクリプチン、ペルゴリド、タリペキソールなどドパミン受容体刺激薬)併用で調整いたします。
もちろん薬物でコントロールできない場合は、脳深部電気刺激や淡蒼球破壊術の適応となることはご承知のことと思います。

次に、Sくんが言われていた副作用についてですね。まとめてみました。ついでにその対策も。この実際の対策については、
つい先日、大学病院の医局へ直接かけあってお聞きしたホットなデーターです。ご参考ください。

●副作用とその対策

1.副作用

?消化器症状(食欲低下、嘔気・嘔吐) 
?ジスキネジア、舞踏様不随意運動 
?せん妄(特に夜間) 
?幻覚(通常は幻視)、妄想

2.対策

1)まず減量する。

2)せん妄の場合は夕刻~夜間に生じやすいので、夕方以降は投薬しない投与法とする。

3)消化器症状に対しては鎮吐薬(ドンペリドン)を併用。

4) 精神症状とジスキネジアに対しては、抗ドパミン作用のある薬物を併用することがあるそうです。

作用の緩徐な順に、ベンザミド系(チアプリド、スルピリド)、フェノチアジン系(クロルプロマジン、塩酸チオリダジンなど)、
強力なものにハロペリドールがあり、症状に応じて選択すると聞きました。
ただし、鎮吐薬、抗ドパミン作用薬ともに、パーキンソン病治療薬と拮抗し、パーキンソン症状を必ず悪化させるので、
可能な限り使用を避けるということです。

やむを得ず使用する場合は,副作用に注意して少量に留めます。

次に抗コリン薬についてのご質問でしたが、
これは、かつてはパーキンソン病(および症候群)の薬物療法の中心でありましたが、レボドパ登場後は首座を譲ったいきさつがあります。
筋固縮と振戦に対する効果が高いが、無動、寡動に対する効果は劣る。
パーキンソン病の初期・軽症例や振戦の強い例では第一選択薬として使うことができる。
症状が進行し、無動が強まればレボドパ製剤を併用する。
パーキンソン病以外の原因のパーキンソン症候群には、レボドパより有効なことがある。

作用機序は大脳基底核線条体のコリン作働ニューロンの抑制です。
それにより、黒質線条体のドパミン作動ニューロンの機能低下によって生じた、コリン作動系ニューロンの相対的機能亢進状態を抑制することにより、ドパミン系とコリン系のバランスを回復させるものです。

次に副作用:

?抗コリン作用、とくに口渇と口の粘り感 これは有名ですよね。
?せん妄,幻覚(とくに高齢者,痴呆を伴う患者) 
?尿閉、便秘 
?記銘障害

さて次に登場する有名薬剤
塩酸アマンタジン

線条体のドパミン作動ニューロン終末部からのドパミン放出を促進することにより、パーキンソニズムを改善。

通常はレボドパに併用されるが、軽症例には第一選択薬としても用いられることはご存知だと思う。

副作用として、幻視、妄想、せん妄などの精神症状が出現しやすい。これが臨床上かなりやっかいだ。

脳卒中後の精神症状(意欲低下など)に使用する場合は、副作用の幻覚やせん妄が出やすいので、少量投与(50~150mg/日)といたします。これがコツです。

次に、
ドパミン受容体刺激薬へいくよ。

麦角アルカロイド誘導体(ブロモクリプチン,ペルゴリド)と非麦角アルカロイド(タリペキソール)があります。
中枢神経線条体のドパミン受容体を刺激することにより、レボドパに似た効果を示します。

ブロモクリプチンとタリペキソールはD2受容体に選択的に作用するのに対して、ペルゴリドはD1受容体,D2受容体の両者に作用する。これ知っていました?

次に、
モノアミンオキシダーゼB阻害薬 とても重要です。
セレギリンは線条体シナプス間隙において、ドパミンを分解するモノアミンオキシダーゼBを阻害することにより、ドパミン量を増加させ、効果を発揮いたします。
これは、多分病理で習ったと思います。忘れたら、教科書をもう一度ご確認くださいね。

本剤は、ドパミン神経終末からのドパミン神経毒取り込みを阻止する作用によって、パーキンソン病発症に予防的に作用するとする学説もございます。
実は小生も同感です。

本剤はそもそも抗うつ薬として開発されたました。

お次は、
ノルエピネフリン系作用薬
ドロキシドパはノルエピネフリン前駆体で、体内でアミノ酸脱炭酸酵素によりノルエピネフリンに変換されるます。
Yahr?度以上のパーキンソン病のすくみ足に対しては、レボドパの効果が不十分な場合に、本剤を併用することにより、ドパミン系と共に低下しているノルエピネフリン系に作用して、すくみ足を改善するんです。

パーキンソン病以外のパーキンソニズム(変性疾患,脳血管性など)の歩行障害に有効なことがございます。
また、昇圧作用により、中枢性あるいは末梢性の自律神経障害による起立性低血圧、失神、立ちくらみを改善いたします。
過度の血圧上昇を生じることがあるので、注意しながら少量から増量いたします。これは小生が言わずとも、ほとんど常識でございます。

さて服薬指導上の注意です。重要です。

抗パーキンソン病薬がパーキンソン病の運動障害の特効薬であることは、患者自身が一番よく知っているし、薬物に対する信頼度は高いということ。念頭におきましょう。
薬剤によって長所、短所が異なり、増量により副作用が出てくることをよく説明してください。

長期治療患者では薬の種類と服用量が増加し、それにつれて副作用は増え逆に効果は減弱します。
しかも服薬法は長期患者ほど複雑になります。
患者の症状や病期に合わせて、最大の効果が得られ副作用が最小になる薬の組み合わせと服薬法を、医師、患者と共に工夫することが大切なのです。これも知っているよね。

さてさて、小生が言うのも変ですが、分かりやすく飲みやすい調剤も大切であるということ。

さらに抗精神病薬、ベンザミド系の鎮吐薬と消化器運動改善薬(メトクロプラミド、チアプリド、スルピリド、シサプリドなど)は、
ドパミン受容体阻害作用があり、パーキンソン病治療薬の効果を相殺します。ご存知でしたか?服薬指導時の大切な確認です。

これらが同時にあるいは他医から処方されていないかどうかのチェックも、薬剤師の重要な仕事です。

次に今度は小生の経験論を踏まえての追伸記述です。ご参考頂けると幸甚ですね。

薬はよく効くが副作用もあること、症状の特徴や病期によって、患者ごとに薬の適量や服薬法が異なることをよく理解して対応するということ。
高齢患者は複雑な服薬法を理解できないこともあるので、家族の協力を得ることも必要であるということ。
重症度が上がるにつれて排尿障害、便秘、摂食困難などの介護上の問題や、医療以外の様々な生活上の悩みが出てくるので、看護・介護面での生活指導も不可欠であるということ。
Sくんの情熱でしたらできると小生は信じております。

次に、次世代の薬剤師が必要なこと。訪問管理指導についても書きましょう。
きちんと服薬する。
急に服薬を止めてはならない(症状の急性増悪や悪性症候群を起こして、危険な状態になることがある)。
服薬法と服薬時間は、患者ごとに最も効果的な方法を採る。
各種の抗パーキンソン薬の長所と短所を患者によく理解させる。
運動機能維持のために適度の運動を毎日続ける。
自力でできることは他人に頼らず自分で行う。
脳定位脳手術の適応は、必ず担当医に相談して決めるということ。物凄く最前線では留意することです。
患者さんの症状が微妙なため、医師らと必ず連携をとり慎重に行動することが、訪問薬剤管理の重要事項なのです。

以上、ごく基礎的な話しで退屈されたと思いますが、返信と回答とさせて頂きます。